FXは手数料無料?
あなたが「日本円を米ドルに交換にしたい」と考えて銀行窓口に現金を持っていった場合、両替手数料というものが発生します。
その額は、代表的な銀行の窓口で1米ドルにつき1円程度ですから、1,000米ドルを両替するのに約1,000円が手数料として必要となります。
また、米ドルから日本円に戻す際にも再び手数料がかかることになります。
では、同じく2通貨の売買を可能にするFXの取引業者においてはどうでしょう。
すでに口座をお持ちの方もいると思いますが、国内海外を問わずほとんどのFX業者では、取引手数料というものがかからないのではないでしょうか。
銀行ほどの規模ではないにせよ、当然FX業者の運営にもサービスの維持や従業員の給与など様々なコストがかかっています。
であるはずなのに、我々ユーザーは手数料も利用料も、運営費も負担していない。不思議ではありませんか?
実はFX業者も、手数料に相当するもの、言い換えれば彼らの収入の原資となるものを我々ユーザーからある仕組みを通して徴収しています。
その仕組みが「スプレッド」というものです。
スプレッドの狭さは業者によって違います。
大切な資金を使ってFXに投資をするなら無駄なコストは避けたいですよね。
海外FXのスプレッドを比較して狭い会社をランキングにしているサイトがあります。
このサイトを参考にして自分にあった海外FX会社を選んでください。
本稿ではスプレッドの仕組み、スプレッドのコスト、スプレッドについての注意点を解説いたします。
需給+???=スプレッド
スプレッド(spread)とは、直訳すると「広がり」という意味です。
為替を含む売買取引においての「広がり」とは、売値(bid)と買値(ask)の差の広がりのことを指します。
例として1,000円の商品を中心に考えた場合、「1,000円で売りたい人」と「1,000円で買いたい人」との取引は即座にマッチしますが、少しでも高く「1,001円で売りたい人」と、少しでも安く「999円で買いたい人」も常に同時に参加しています。
この場合の買いたい向きを「需要」、売りたい向きを「供給」と呼び、合わせて「需給」と呼ばれます。
このように需給というのは常に差額をもっており、例でいうところの「差額2円」が売値と買値の広がりであり、売買の根源的なスプレッドとして存在しています。
しかし、この需給を取り持つだけではあらゆる仲介業者は雀の涙ほどの差額を受け取ることしかできません。
そこで身近な例を用いて、家庭用ゲーム機を買い取りショップに持ち込んだケースを考えてみます。
店頭での買取価格(売値)が15,000円のとき、販売価格(買値)が25,000円を付けていたりすることがありますね。
実際には20,000円で売買が成立すれば売る側も買う側も得をするはずですが、仲介の第三者としてのショップも利益を求めているわけで、そこで発生させる差額10,000円こそが業者の利益であり、真のスプレッドというわけです。
FXの現場においても同様のことが行われています。
2通貨間の需給の差にFX業者は自身の利益となる差額を加えています。
それらを合わせてできた「売値と買値の広がり」こそが、我々が実際に目にするスプレッドであり、ユーザーのコストとも言えます。
実際には数銭、もっと小さくコンマ何銭という世界ですが、1日に数台程度の売買となるゲーム機と違い、為替取引では無数の量の通貨が日々、リアルタイムに取引されています。
FX業者は薄利多売のような形をとっても少しずつ利益が上がるという仕組みになっています。
スプレッドの実際
為替取引におけるスプレッドは「需給の差+FX業者の取り分」で構成されており、私たちのコストとなる、ということはご理解いただけたと思います。
それでは次に実際のコストを金額で見てみましょう。
2022年現在、国内の主要FX業者では、米ドル/日本円のスプレッドを「0.2銭」としているところが多いようです。
1円にも満たない程度ならほとんど無料、心配なしと思うかもしれませんが、FXでは1万通貨ずつを「1Lot(取引単位)」として取引するのが一般的です。
つまり1Lotの取引を1回するにあたって「0.2銭の1万倍=20円」が実際のコストとなります。
ここで注意していただきたいのが、「1Lotあたり」「1回あたり」という部分です。
つまり、取引をするLot数が増えた場合、スプレッドによるコストはLot数に比例して大きくなります。
また取引をする回数にも比例してコストは大きくなっていきます。
例でいえば10Lotを取引する際には「1万通貨×10Lot×0.2銭=200円」がかかることになりますし、1Lotを10回取引しても「20円×10回=200円」がかかるという形です。
ちなみに、FXでは往復(買うときと売るとき)という概念は用いられませんので、スプレッドが損益に影響してくる機会は取引を開始した1回のみとなり、以降はその取引を終了するまで評価損の一部という形で引き続きポジションに残り続けます。
スプレッドの注意点
スプレッドには「原則固定」という但し書きがついているのをよく目にすると思います。
基本的にこのスプレッドの幅は上下しないという意味ですが、原則があるということは例外も存在するということです。
例外的に変動するタイミングでは、基本的にスプレッドは「拡大」します。
ポジションの評価損が一時的ではあるものの増加し、ユーザーに不利な状況となるため注意が必要です。その原因には、先に触れた「需給」が大きく関係しています。
市場参加者が多く、取引が活発な(需給が良好な)状態であるほど売買の成立価格というのは適正な値に近づきます。
しかし、市場参加者が少ない(需給が悪化した)状態になると、買いたい人がつける安値と売りたい人がつける高値の差が大きくなってしまうことがあるのです。
例としてオークションの現場を想像してみましょう。
多くの人数が参加するオークションなら、初値1,000円から1,001円→1,002円…というように、適正な価格ギリギリまで値付けが進み、売りたい側も満足のいく落札額が得られることでしょう。
しかし閑散とした参加者の少ないオークションだと、初値1,000円を付けてから声が上がらず、そのまま落札してしまうこともあるかもしれません。
参加者が少ない売買取引は適正な取引価格をつけにくく、また乖離も大きくなるというわけです。
FXの現場で市場参加者が減り、スプレッドの拡大が懸念されるタイミングとして、主に経済指標、時間帯、時節などがあり、稀に市場の急変時が挙げられます。
経済指標とは、通貨を発行する各国の経済情勢を伝える、主として月報のことです。
これらの中には通貨の価格に与える影響が非常に大きな指標が存在し、その発表の前後は取引をいったん止める向きも多くなることでスプレッドが拡大します。
市場参加者が少ない時間帯とは、主に日本の市場が開く直前のタイミングです。
為替取引は世界の大きな取引所(東京、ロンドン、ニューヨーク)が並行して開場している時間帯が多くを占めるのですが、東京市場が開く前後だけはロンドン市場もニューヨーク市場も閉まっているため、参加者が非常に少なくなります。
時節とは、祭日などのいくつかのイベントです。
例えばクリスマスや年末年始などでは、市場は開いているのにそもそも取引されないということも多く、スプレッドが広がることがしばしばあります。
以上に挙げたタイミングは基本的に予期が可能で、取引業者からも「スプレッド拡大のご注意」といった連絡を事前に受け取ることもあります。
しかし、予期しないタイミングでスプレッドが拡大することも稀にではあるものの存在します。
テロや災害、政変など突発的な市場の急変です。
その際には適正な取引価格を市場が一時的に見失い、スプレッドが急拡大する可能性があるということは念頭に入れておいたほうがいいでしょう。
これらのスプレッドの拡大は長くとも数時間、早ければ1分ほどで元の固定値に戻っていきます。
いずれにしても、スプレッドはあなたのポジションの「評価損」いう形で、そのポジションが決済されるまで付き合うものです。
スプレッドは拡大することもあるということを念頭において、適切な証拠金維持率、レバレッジを心がけておきましょう。
さいごに
一見無料に見えるFX取引ですが、スプレッドという形でユーザーはコストを負担しているということはご理解いただけたでしょうか。
FXの取引において、このスプレッドの存在を避けて通ることはできません。
しかし、業者の選定、取引スタイルの見直しなどでこのコストを小さくする努力はできます。
得られる利益を少しでも大きくするために、スプレッドとの付き合い方をまずはじっくり考えてみてはいかがでしょうか。
「お金のかからない努力から始める」というのは成功の秘訣のひとつです。
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